餓狼伝

標準

夢枕 獏氏の原作を「バキ」シリーズで知られる板垣 恵介氏が漫画化した長編格闘漫画です。しかし、本作の特徴はそのオリジナリティの強さにもあります。

個性豊かなキャラクターや、主人公の丹波 文七が道場破りに入ったプロレス道場で返り討ちに遭いさらなる強さを追い求めるといった骨組みの部分は一緒なのですが、巽がアメリカでぶつかるのがボクサー上がりのリチャードではなく、盲目であるが故に常人をはるかに上回る力を宿すに至った強敵、クライベイビー・サクラだったり、いかにもゴツゴツした肉体とメンタリティを持つ長田や梶原とは対照的な、強烈な身体能力を有した後輩、鞍馬が出てくるなど、登場人物にもストーリーにも大幅に独自路線が取り入れられており、原作を熟読した方にもまったく新しい刺激とともに(かと言って原作の良さが損ねられているわけではない)楽しむことができます。

作品の中心、肝心要の格闘シーンは、板垣氏の筆によるものだけに超強烈かつスリリング。肉と骨が衝突する痛みや血の味、関節の軋みまでが伝わって来るような格闘シーンの連続と、それを支える丹波たちの恐るべき情念の凄まじさは本作ならではのものと言っていいでしょう。また、強さの「幅」が「バキ」シリーズに比べて比較的現実よりであり、作中最強候補の松尾 象山があまり積極的に戦わないこともあって、リアリティに関して言えば、板垣作品の中においては随一と言っていいかも知れません。

試合には勝敗があり、トーナメントで優勝できるのもただ一人という関係上、ほとんどのキャラが敗れるわけですが、勝てなかった人に対しても見せ場や評価の上がる部分が用意されていることが多いのも、個人的には嬉しいところでした。